「アイシテル ~海容~」感想をママ視点でレビュー。親子の関係で一番大切なことを教えてくれる必読コミックです。

「アイシテル ~海容~」レビュー評価

子育てをしていると、「本当にこれでいいのかな?」と迷ったり、自分がいい母親になれているか心配になったり。
母親という存在がこんなに不安なものだとは思いませんでしたよね。

ドラマ化もされた「アイシテル ~海容~」というコミックは、ちょっとしたことで滑り落ちてしまう親子の闇と、親子にとって本当に大切なものが何かを考えさせてくれる作品です。
子育て中のママパパにはとても切ない内容ですが、それゆえに大きな気づきがあるかもしれません。

アイシテル ~海容~

殺人事件をドラマチックにあつかっただけのミーハーな作品かと思いきや、事件の裏にある両親と子どもとの関係性が本当の主題。
「母親はこうでなくては」「専業主婦なんだから育児と家事は完璧にしなきゃ」などと追い詰められている人には、ぜひ読んでいただきたいです。

加害者・被害者どちらかの視点で語られるわけではなく、両者の視点を織り交ぜながらストーリーが進んでいくので、どちらの家族にも次第に感情移入してしまってとにかく「苦しい」「切ない」としか言えないお話
線の細いタッチの絵も、壊れてしまいそうな人々の印象にマッチしていてすっかりのめり込んでしまいます。

ボロボロ泣きながら、あっという間に完読してしまいました。

あらすじ

私の息子が殺された……。いつもと同じ日のはずだった。
たった10分間の母親の不在を除いては――。下校時に行方不明になった7歳の清貴(きよたか)ちゃんが死体で発見されたのは行方不明になった翌朝。
殺された我が子を受け入れられず呆然とする母親。
やりばのない怒りと悲しみ、綻ぶ家族の絆――。
そんな中、被疑者として保護されたのは11歳の少年だった!!

全ての母親に捧げる、渾身(こんしん)の物語――。

深い闇のすぐそばにある危うい親子関係

被害者・加害者どちらとも、母親なら誰でも滑り落ちてしまう可能性のある闇に、背筋が寒くなります。

なるべくいい親になろうとしていても、それが「子どもにとって」本当に求めているものかどうかは、まったく別問題です。
特に加害者側の母親に、自分が重なるというママも多いのではないでしょうか。

一番大切なのは、たぶん、目の前にいる子どもの目をしっかり見つめること。
きちんと心まで向き合って話をすることなのかな、と思います。

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ネタバレ考察

親子のすぐそばにある深い闇
ここから先はネタバレを含みますので、閲覧にはご注意ください。

加害者の親子

加害者は小学六年生。
母親は一見完璧な主婦。無農薬野菜で食事はいつも手間のこんだもの。
身の回りのものは、丁寧に作られた手作り品。
子どものためにキャリアを捨てて、現在は子どもの塾のためにパートの日々。

一方の父親はまったく家庭をかえりみない。自分が一番大切な人。

……こういう家庭って、実際にいくらでもありますよね。

育児放棄も虐待もしていない。母親はできる限りの愛情を注いできた。
そのために自分のすべてを犠牲にもしてきた。

なのに、ちょっとしたすれ違いで取り返しのつかない闇へと転がり落ちてしまいます。

このストーリーに、私自身はっとさせられました。
親はいつのまにか「子どものためにやってあげている」という思いが強くなってしまいます。
自分を犠牲にして色々してあげているけど、果たしてそれは本当に子どもが望んでいることなんだろうか

子どもが本当に望んでいたのは、ママやパパとの本当に他愛もない会話やコミュニケーションだったんじゃないかと。

先輩ママに、「とにかく嫌がられてもなんでもいいから「愛している」と伝えて、めいっぱい愛情表現をするのが親子関係のコツだよ」と言われたことがあります。

子どもが小学生になると、急に親の手から離れていきます。
確かに楽になって思わず楽さに浸りがちになるのですが、年齢相応にしっかりコミュニケーションを取っていかないとなぁと考えさせられます。

加害者の母親もあの小学四年生の日に、ただ玄関から顔を出して「おかえり」と言ってあげさえしていれば。
水浸しになったときに、「何かあったの?」の一言さえかけられていれば、この事件は起きなかったはず。

ただ、自分に余裕がないとどうしても子どもを思いやれないのが現実ですよね。
その場は突っぱねてしまったとしても、後から余裕が出来たタイミングで「あのときはごめんね。何かあったの?」と声をかけられれば、たぶん大丈夫
そのためにも、普段から自分が悪かったと思ったときには子どもに謝る習慣が必要なのかなと思います。

被害者の親子

個人的には、こちらの家庭のほうが闇は深いような気がします。

あまりにも甘やかして育てすぎてしまったために、人の気持ちを思いやることができなかった少年。
3,4歳では不可能でも、小学一年生であれば「こんな事を言ったら、相手が悲しい気持ちになる」ということぐらいは察することができます。
身近にお姉ちゃんがいたにも関わらず、親が一方的に弟ばかりを溺愛したために、どんなことをしても、言っても、自分が責められることはないというような間違った認識をもってしまったのが、おそらく事件の発端です。

……なんて言いながら、私自身も3人の子どもがいて、すべてを平等に可愛がれているかというと、正直平等には出来ていません。

ケンカをするとどうしても力の強い上の子を怒りがちになってしまいますし、2人の意見がぶつかったときには、理解してくれる上の子に我慢させてしまうことも多いです。
最近「どうせ弟くんの言うとおりになるもん」と上の子がいじけるようになってきたところだったので、このストーリーに心が痛かったです。

被害者家族のお姉ちゃんは大きかったから、ワガママを言わずに全部胸の中に納めてしまった。
母親は下の子が可愛くてしかたなくて、その気持ちを隠しきれなかった。

家族のゆがみが、偶然知り合った加害者少年に突き刺さってしまったような形です。

これにはやはり、意識的に上の子を優先する時間を設けたり、下の子が何かをしたときにはきちんと下の子をしかりつけるようにしないとなぁと、改めて思わされました。

まとめ

子どもが関わる事件をニュースで見るたびに、「何が原因何だろう」と不安になりますよね。
この「アイシテル ~海容~」では、一つの答えを教えてくれています。
すべての事件がおなじ原因ではありませんが、親子の関係を考え直す一つのきっかけになることは間違いありません。

  • どんな母親でも、ちょっとしたことで闇に転がり落ちてしまう可能性はある
  • 何より大切なのは、子どもの心にきちんと寄り添うこと
  • 子どもが大きくなって手がかからなくなってきても、親がそれに甘えてはいけない
  • 子どものためにも、人を思いやる気持ちをきちんと教えること

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ABOUTこの記事をかいた人

薬剤師で小四&小二の男児と年中の女児、3児の母。 産後うつになりかけた経験と、地域の子育て支援活動のつながりから、ママがラクに楽しく育児できる方法を研究しています。 育児のモットーは「死ななきゃok」。